光源性能
通常運転モード
BL3/BL2の通常の運転モードにおいては、自己増幅自発放射方式(Self-Amplified Spontaneous Emission : SASE)による硬X線FELを供給します。
BL3の通常運転モードにおける光源パラメータを以下の表に示します。
光源パラメータ (BL3) | |
電子ビームエネルギー | 8.5 GeV max. |
ピーク電流 | > 10 kA |
電子バンチ電荷量 | 0.2 - 0.3 nC |
繰り返しレート | 30 Hz (60 Hz max.) |
電子バンチ時間幅 | < 20 fs |
規格化スライスエミッタンス | ~0.4 μm |
アンジュレータ周期長 | 18 mm |
K値 | < 2.7 |
| |
光子エネルギー | 4.0 - 20 keV |
ピークパワー (@10 keV) | > 60 GW |
パルスエネルギー (@10 keV) | SASE: > 0.6 mJ モノクロビーム (Si 111): ~6 µJ |
パルス幅 | 2 - 10 fs |
エネルギーバンド幅 ΔE/E (半値全幅, @10 keV) | SASE: 0.5% モノクロビーム (Si 111): 0.01% |
ビームライン透過率 (@10 keV) | ~70% |
Refs:
Yabashi
et al., J. Synchrotron Rad.
22, 477 (2015).
doi:10.1107/S1600577515004658
Tono
et al., J. Synchrotron Rad.
26, 595 (2019).
doi:10.1107/S1600577519001607
光子エネルギーと典型的なパルスエネルギーとの関係(BL3)
2色発振 (BL3)
SACLAのアンジュレータ列を2つの区間に分け、それぞれに異なるギャップを設定することで、2種類の波長のXFELを発振させることができます。BL3においては、
1色目のレーザー発振を終えた電子ビームをマグネティックシケインにより迂回させ、1色目と2色目のXFELパルスの間に時間差を付けることが可能です。
遅延時間は数十アト秒の精度で設定することができ、精密なポンププローブ計測などへの応用が期待できます。
【参考文献】T. Hara
et al., Nature Communications
4 (2013)
doi: 10.1038/ncomms3919.
2色発振時のXFELビームパラメーターの例
| 第1色 | 第2色 |
光子エネルギー | 13.1 keV | 9.7 keV |
パルスエネルギー | 40 μJ | 40 μJ |
最大遅延時間 | - | 40 fs |
| | |
光子エネルギー | 12.2 keV | 9.7 keV |
パルスエネルギー | 50 μJ | 31 μJ |
最大遅延時間 | - | 40 fs |
| | |
光子エネルギー | 6.1 keV | 5.9 keV |
パルスエネルギー | 60 μJ | 60 μJ |
最大遅延時間 | - | 80 fs |
セルフシード (BL3)
BL3において、反射型セルフシード方式によるXFELの利用が可能です。セルフシードXFELは、SASE型XFELと同等の平均パルスエネルギーを有しつつ、高い単色性を示します。この方式のXFELの提供には1シフト程度の調整時間が必要です。また、波長変更にも通常より長い時間を要します。これらの調整時間はユーザービームタイムに含めます。利用を希望するユーザーは、課題申請前に必ずXFEL利用研究推進室(sacla-bl.jasri@spring8.or.jp)に連絡し、提供可能な波長範囲などの条件をご確認ください。
【参考文献】I. Inoue
et al., Nature Photon.
113, 319-323 (2019).
doi: 10.1038/s41566-019-0365-y
セルフシードXFELの典型的なパラメータ
光子エネルギー | 7 keV -15 keV |
エネルギーバンド幅 ΔE/E(半値全幅) | 0.01 % |
パルスエネルギー | 200 µJ |
分割遅延光学系 (BL3)
BL3においては、複数のSi(220)結晶素子により構成された分割遅延光学系(split-and-delay optics, SDO)が利用可能です。1つのXFELパルスを結晶エッジ部において2つに分け、それぞれ異なる光路を通して同一光軸上に再結合させることで、百ピコ秒に及ぶ時間差のついた2つの単色XFELパルスを生成できます。遅延時間は1フェムト秒以下の精度で設定することができ、X線ポンプX線プローブ計測や、乱雑系の揺らぎ測定などへの応用が期待できます。
【参考文献】T. Hirano
et al., J. Synchrotron Rad.
25, 20-25 (2018).
doi: 10.1107/S1600577517014023
SDO利用時の典型的なパラメータ
光子エネルギー | 5 keV -15 keV (Si 220) |
エネルギーバンド幅 ΔE/E | 5.6 × 10-5 |
パルスエネルギー (@10 keV) | SASEモード: 0.2 µJ + 0.2 µJ
セルフシードモード: 2 µJ + 2 µJ |
最大遅延時間 | 100 ps |
最小遅延時間 | −10 ps |