SACLAは挑戦します
日本が培ってきた多くの技術の粋を集めることによって、はじめて完成した国家基幹技術・SACLAは、今後その利用によって、新たな技術を産み出すことに貢献します。SACLAによって創られる新しい光は、将来にわたって科学・技術・産業から次々と湧き上がる課題を、原子レベルからの理解によって解決するでしょう。SACLAを作り上げるとき、私たちは多くの埋もれていた技術や材料を掘り起し、それらに新たな使命を与えて活用してきました。同様に、原子レベルの構造や機能を理解することにより、今まで定性的な理解に留まっていた様々な現象に新たな光を当て新しい科学や技術の創生につなげていくこともSACLAの課題です。これらにより、SACLAはより少ない資源に、より少ないエネルギーの注入で、より大きな付加価値を得ることに不可欠な技術的基盤を提供します。一方で、ここで産まれた新しい技術がSACLAを進化させ、さらに新しい技術の創生を可能とします。現時点で私たちが想像することもできないような画期的な新技術や新産業の礎がSACLAによって創られていくことを信じて、一層の挑戦を続けていきます。
SACLAのシード化による高品質化
「種光」とよばれる微弱な光を使ってXFELの光波をさらにきれいにし、輝度を数桁高める「シードXFEL技術」。最先端の加速器技術とレーザー技術を組み合わせ、開発しています。
SACLAとSPring-8を同時に使う相互利用施設
XFELと放射光を同時照射できる世界唯一の施設では、フェムト秒で原子の世界を探索します。
SACLAとスパコンとの連携による大規模データ解析
SACLAのデータ解析システムにより、検出器からの大規模データを高速に保存し、分析します(左)。さらに精密な解析のため、神戸のスーパーコンピュータ「京」を利用します(右)。
タンパク質の構造解析 |
XFELはきわめて明るく質の良い光であるため、複雑なタンパク質の構造を従来よりも簡易に調べることができます。 |
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膜タンパク質は細胞の表面で細胞内外の物質のやり取りをする役割を果たします。今使われている薬の半数以上がこの膜タンパク質に働いて効果を発します。 |
生体ナノマシン |
生体内には、 ナノスケールの微小マシンが生命活動の重要な機能を担っています。 XFELにより、 これらの働きを解明し、 生体や環境に優しい医薬品やナノ材料を創出します。 |
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細菌はべん毛を回転させ、水中を泳ぎます。べん毛は約30種類以上の異なる蛋白質からなる生体超分子モーターで、その機能の解明はナノマシンの設計等に役立つと考えられます。 |
超高速現象の観察 |
100フェムト秒※以下というXFELの瞬時の光を用いると、物質の化学反応や吸着反応の根幹を担う電子や原子の超高速の挙動を観測することができます。
※フェムト秒とは時間の単位で、1000兆分の1秒のこと。 |
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左図は酸素ガスを吸着した人工物質の構造。赤で示したものが酸素分子(O2)で、物質の細かい孔に規則正しく収まっています。 |
細胞生物学 |
現在、細胞のしくみはまだ解明されていない部分が残されています。XFELを用いると、細胞をナノレベルまで、生きたままリアルタイムで観察でき、細胞の真の姿を見ることができます。 |
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極限状態の生成 |
XFELの極めて明るい光を利用することにより、宇宙空間における激しい反応を再現したり、真空から物質・反物質がわき出す「真空崩壊」と呼ばれる現象へのアプローチが可能となります。 |
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質量の大きな星は超新星爆発を起こし、極めて高い温度・圧力の状態から様々な物質が創成されます。 |