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2017B期より、 3本のビームラインの同時運転を開始 (ユーザー向けお知らせ)



X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAは、2本の硬X線FELビームライン(BL2とBL3)の同時利用を2017B期(2017年9月)より開始します。 これにより、既に共用運転中の軟X線ビームライン(BL1)とあわせて、3本のFELビームラインを同時に利用することが可能となります。

概要
理化学研究所(理研)、高輝度光科学研究センター(JASRI)は、BL2とBL3のパルス毎の振り分け運転において、両ビームラインを同時に高い出力で運転することに成功しました[1]。 また、既に稼働中のBL1は専用の加速器を有するため、BL2およびBL3と独立して運転することが可能です。したがって、2017B期からは3本のFELビームラインで同時に利用実験を行うことが可能となり、 SACLAの利用機会が拡大します。 増加するビームタイムを有効に活用していただくため、SACLAの利用を検討されている方に以下の情報をお知らせします。

BL2において実施される実験
BL2では、定型の実験向けに開発された実験プラットフォームを比較的長期にわたって設置し、 ライフサイエンスを軸とした利用実験を実施します。具体的には、以下の実験手法が主な対象となります。
・シリアルフェムト秒結晶構造解析 (SFX, Serial Femtosecond Crystallography)
・固定ターゲットタンパク質結晶構造解析 (FPX, Fixed-target Protein Crystallography)
・コヒーレント回折イメージング (CDI, Coherent Diffractive Imaging)
上記の手法を用いる課題は、原則としてBL2で実験を行います。ただし、フェムト秒領域の高い分解能が必要なポンププローブ実験などは、BL3で実施します。

フィジビリティチェックのためのビームタイム(FCBT)
SACLAの実験課題が採択されたユーザー向けに、実験のフィジビリティチェックのためのビームタイム (FCBT) を設けます(1課題あたり最大0.5シフト、6時間)。このビームタイムは実験の数週間前に設定され、 試料のスクリーニングなどに活用することができます。予備的なデータを取得することで、試料や実験条件に関する課題を事前に見つけ、より確実性の高い実験を実施することが可能となります。 FCBTにおける実験は、当面のあいだ以下の条件で実施します。
      使用ビームラインおよびハッチ:BL2 EH3
      使用実験装置:DAPHNIS[2]
      標準光子エネルギー:7 keV(ピンクビーム)
      集光ビームサイズ:1-2 μm程度(BL2 EH3の1 μm集光装置を利用)

このビームタイムを希望するユーザーは、課題申請書に希望する旨および必要な理由を記載して下さい。

BL1の現状の性能について
理研とJASRIは、BL1で軟X線FEL(SXFEL)を生成するための高度化を進め、2015年10月には波長30 nm付近におけるレーザー発振に成功しました[3]。その後も調整運転が続けられ、 2016年7月15日にはユーザーによる最初の利用実験が実施されました[4]。さらに、2016年の夏には加速器が増強され、最短波長12 nm以下(光子エネルギー100 eV以上)の領域に達しています。
現在、共用運転における出力(パルスエネルギー)は、標準的な波長領域の10-30 nm(光子エネルギー40-120 eV)で数十μJ、8-10 nm(120-150 eV)の短波長領域では数μJです。 また、スペクトルのバンド幅は約2%で、ビームラインの集光光学系を利用する場合、標準集光スポットサイズは約10 μmです。


[1] 2017年3月29日付プレスリリース「SACLAで2本の硬X線FELビームラインの同時高出力運転に成功 -利用機会の大幅増によりさらなる成果創出へ-」。
[2] K. Tono et al, "Diverse application platform for hard X-ray diffraction in SACLA (DAPHNIS): application to serial protein crystallography using an X-ray free-electron lase", J. Synchrotron Rad. 22, 532-537 (2015).
[3] 2016年4月26日プレスリリース「SACLAで「SXFELビームライン」が稼働 -軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する世界初の施設に-」。
[4] 2016年7月22日プレスリリース「SACLAが「SXFELビームライン」の共用運転を開始 -軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する世界初の施設を実現-」。





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