ご挨拶
理化学研究所
放射光科学研究センター センター長
石川 哲也
独立行政法人理化学研究所と財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)は、平成18年度から、共同でX線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAの建設を進め平成22年度に完成、23年6月には初レーザー発振を観測し、24年3月には共用運転を開始しました。XFELはナノ領域での構造と機能を直接的に観察するための光であり、21世紀の科学技術を支える基盤として期待されています。
SACLAは、諸外国で数キロメートルの規模で計画されていたXFELを700 mで実現したものであり、SACLA以降のXFEL計画はSACLA同様コンパクト化することが常識となりました。可能な限りの小型化を図るため、システムとしても我が国独自のものとし、単結晶カソード電子銃、高勾配Cバンド加速システム、短周期真空封止型アンジュレータなど、多くの独自要素技術を結集して設計されています。要素技術の多くは、厳選された素材、高度の加工技術、高精度計測制御技術など、我が国の広範な産業技術に支えられています。このため、SACLAは先端基盤施設の中では、国産化率が抜きんでて高いものとなりました。
一方でSACLA建設にあたっては、当時の水準では未踏の様々な技術も要求することとなりました。それらの一つ一つを我々とメーカーの皆様との協力のもと、技術の高度化を達成することによって、SACLAを完成させることが可能となりました。我々の高い要求に応えて頂いた皆様のご努力に感謝するとともに、我々も微力ながら我が国の技術水準の向上に貢献ができたと喜んでおります。
このように産官学が一体となって我が国の産業基盤の向上に一躍を遂げた結果、SACLAは当初計画通り、平成23年度内の供用開始に至りましたが、その性能は当初計画を既に凌いでおり、また先行する米国LCLSとの比較においても、優れた安定性や再現性など、SACLAが既に優位に立っている面も多く、SACLAを利用した我が国の科学技術の飛躍的な発展が期待されています。
とはいっても、SACLAは我々が今まで経験したことの無い光源であり、その新奇な利用方法はこれから産官学の利用者の皆様方と協力して作り上げていくものだと認識しております。その先には、現在の我々の想像も及ばないような新産業の扉が待っていることでしょう。
今後とも、皆様のさらなるご支援・ご協力をお願いする次第です。