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ビームライン光学系・診断系

XFELに用いられる光学素子には、 コヒーレントな波面を乱すことがないよう極めて高い品質が要求されます。 また、 光源性能をパルス毎に計測し、 実験データと照らし合わせるための非破壊型の診断系が必要です。
これらの要求を満たすビームライン光学系・診断系が開発され、光学ハッチ内に集約して設置されています (図1)。 基幹光学系としては、実験の目的に応じて、 2組のダブルミラーシステム (A: 低エネルギー用、 B: 高エネルギー用) 及び二結晶分光器が選択可能です (図2)。 ダブルミラーシステムには、光学素子としてシリコンの超高精度平面ミラーが用いられており、 表面材質はシリコンまたはカーボンが切り替え可能です。 ミラーシステムAとBは、 カットオフエネルギーに応じて選択されます。 二結晶分光器には、 無歪みのシリコン(111) 結晶が用いられています。 二結晶分光器を選択した場合、 使用波長を固定することが可能ですが、 バンド幅は制限されるため (ΔE/E = 1e-4) 強度は数十分の一に低減します。 いずれを選択した場合にも、 実験ハッチ内のサンプル位置でのビーム高さは一定に保たれるため (床面より1420 mm)、 実験中にも容易に切り替えることが可能です。

ビーム強度を減衰させるために、 シリコン単結晶の固体アッテネータとガスアッテネータ(GAT: gas attenuator) が用意されています。また、軸外の不要な迷光等を除去するために、4象限スリット(SLT: 4-jaw slit)が設けられています。

XFELは水平直線偏光ですが、 これを円偏光や垂直直線偏光等の任意の偏光状態に変換するために、 X線偏光制御装置 (X線移相子、 XPR) が設置されます。

ビーム診断機器として、薄膜透過型モニタ(BM: foil-based beam monitors)、ガス散乱型モニタ(GM: gas-based beam monitor)が常時稼働しており、ショットごとのビーム強度、位置がデータベースを通して利用可能です。また、スクリーンモニター (SCM: screen monitor) チャンバー内の蛍光スクリーンをビームパスに挿入することで、ビームの空間プロファイルの計測が可能です。さらに、 ナノダイヤモンド薄膜からの回折光を利用したスペクトルメータにより、XFELのスペクトル計測が非破壊で行われます。

図1 ビームライン配置図

側面図

正面図






図2 ビームライン基幹光学系とエネルギー範囲。 ダブルミラーシステム(A: 低エネルギー用・入射角 4 mrad、B: 高エネルギー用・入射角 2 mrad) 及び二結晶分光器を切り替えて使用する。