※1 大型放射光施設SPring-8 理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の大型放射光施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeV に由来する。放射光(シンクロトロン放射)は、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する指向性の高い強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。日本の先端科学・技術を支える高度先端科学施設として、日本国内外の大学・研究所・企業から年間約1万4千人(2010年度実績)の研究者が利用している。
※2 X線自由電子レーザー(XFEL) 施設SACLA(サクラ) X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)は、通常のレーザーと異なり、物質に束縛されていない自由電子を用いてレーザー増幅を行う。 日本におけるXFEL施設は、 第3期科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つとして位置付けられ、理研の大型放射光施設SPring-8に隣接して整備を進めてきた。2011年3月には施設が完成し、 愛称をSACLA(SPring-8 Angstrom Compact free electron Laser)と決定した(2011年3月29日発表: http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/110329/index.html)。SACLAは、これまでの放射光と比べて、輝度は10億倍、パルス幅は1,000分の1 (10フェムト秒=100兆分の1秒)、さらに100パーセント位相のそろったコヒーレントなX線という性能を持つ。目指す最短波長は0.6Å。 基礎・基盤研究から、産業や応用研究開発まで、諸外国に先駆けて革新的な成果を創出することが期待される。具体的には、がんやエイズなどの難病に対する特効薬の開発、持続的発展に必要な新エネルギーシステムの研究など、幅広い分野での活用が見込まれている。
※3 Å(Angstrom:オングストローム) 長さの単位の1つで、100億分の1メートルを表す。原子の大きさはほぼ1 Åであるため、分子や原子のような微細な物質の様子を観察、測定することができる。
※4 膜タンパク質 生物の細胞や細胞の中にある小器官は、膜で覆われ、外部と隔てられています。膜にはたくさんの種類のタンパク質が存在しており、これを膜たんぱく質という。この膜タンパク質が、細胞や細胞の中の小器官同士の情報伝達や物質輸送といった、生命現象に欠かせない重要な役割を果たしています。また、医薬品の約半数は、膜タンパク質にはたらきかけており、生命現象の理解や新薬開発のためには、膜タンパク質の機能・構造を明らかにすることが重要である。
※5 国家基幹技術 2006年3月に閣議決定され、第3期技術基本計画において選定された「国家的目標と長期戦略を明確にして取り組むべき重要技術」。「宇宙輸送システム」「海洋地球観測探査システム」「高速増殖炉サイクル技術」「次世代スパコン開発・利用」「X線自由電子レーザー」の5つが選定された。XFELは、これまで実現不可能であった分析を可能にする技術と位置付けられ、広範な科学技術分野における貢献が期待されている。