SACLA発振
「夢の光」をついに実現−X線自由電子レーザー施設 SACLA(サクラ)がX線レーザーの発振に成功—
「夢の光」をついに実現−X線自由電子レーザー施設 SACLA(サクラ)がX線レーザーの発振に成功−



X線の発見・発生、放射光やレーザーの発明は、新たな科学技術を切り拓き、産業の発展に寄与してきました。1895年にレントゲンによって発見されたX線は、可視光に比べとても波長が短く、物質を透過する力が大きいので病院での診察に使われたり、SPring-8のように原子や分子のレベルで物質の細部構造を観察するのに利用されてきました。一方、1960年代に可視光領域で実用化されたレーザーは、特定の波長において位相の揃ったコヒーレントな光※6であるため、CDやDVD、商品のバーコードの読み書きに利用されたり、光ケーブルでレーザー通信をするインターネットなどに使われています。X線を発生させ、応用する技術と、レーザーを開発しそれを利用する技術は別々に進んできました。しかし、これら2つの特性を併せ持つX線レーザーを作る技術は未開でした。X線レーザーを発振させることはそれほど困難だったのです。

自然現象や生命活動は、化学変化によって起こっています。この化学変化を原子・分子のレベルで観察する方法はないものか。それがあれば、病気の解明や病気に対応する薬の創出、地球の環境を悪くする物質ができる様子を調べ、それを抑制する方法を考案するなど、私たちの生活がますます向上します。それを実現するため、X線の波長を持つレーザーが長らく待望されていました。

1980年代、「X線自由電子レーザー(XFEL)」という、高度な加速器技術に基づく方式を用いることで、コヒーレントな光の波長をX線領域まで到達できる可能性があるということが理論的に提唱されました。1990年代から本格的な技術的検討と要素技術開発が行われ、2000年代にはアメリカ・欧州・日本の3カ所で施設の建設が進められる事になりました。日本では、2005年にはこの理論を検証するため、プロトタイプ機SCSS試験加速器※7を建設し、 X線より波長の長い真空紫外光(波長600Å、最大出力30μJ/pls)のレーザー発振に成功しました。次年度からは、「国家基幹技術」としてXFEL施設の建設プロジェクトを開始し、2011年3月に施設が完成しました。さらに愛称を広く公募し「SACLA」と名付けました。

SACLAが出力するX線レーザーは、SPring-8の放射光と比較して、高いピーク輝度(約10億倍)、狭いパルス幅(約1000分の1)、高いコヒーレンスという特性を持ちます。



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X線自由電子レーザー施設 SACLA 〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1番1号 独立行政法人 理化学研究所 播磨事業所
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